JRにおいて、旅客が使用する普通乗車券は、片道、往復、連続の3種類に分けられます。
片道、往復は読んで字のごとくですが、連続券が登場するシーンは限られています。連続券は、片道・往復のいずれにおいても発売できない特殊な行程の場合に発売されます。具体的には、乗車区間が重複する場合または乗車区間が1周を超える場合です。
このブログをご覧の方であれば、ご理解いただける内容でしょうから、連続券に関する詳しい説明は割愛いたします。知りたい方はこちらをご確認ください。
では、今回取り上げる“変な連続乗車券”を見てみましょう。こちらです。
この乗車券、違和感しかありません。
そう、乗車区間が1周していないどころか、
券面に記載されている経路が重複していないのです。
普通に考えて、これは誤発売と解されるでしょう。しかし、連続乗車券の発売シチュエーションと、この乗車券を使用して旅行する場合の行程を踏まえると、正当な発売と言えます。
先ほど述べたように、連続乗車券が発売されるシチュエーションは「乗車区間が1周を超える」または「乗車区間が重複する」場合です。この乗車券では「乗車区間が重複する」という条件を満たしたため、連続乗車券が発売されました。
今回の連続乗車券の発駅は中央線の荻窪駅、着駅は東海道線の品川駅で、東京駅が折り返し駅となっているため、東京駅で運賃計算を打ち切って発売されています。
この連続乗車券を用いた行程は、こうです。
荻窪(中央線)新宿(特急成田エクスプレス)東京(東海道線)品川
上記の行程であれば、乗車区間の重複により連続乗車券が発売されます。
では、なぜ一見すると連続乗車券の要件を満たしていないように見える乗車券が発売されたのでしょうか。
この乗車券が“変”となってしまった理由は、マルスシステムの挙動に由来します。
この連続乗車券は大都市近郊区間内完結であり、マルスにおいて、大都市近郊区間内で完結する経路が入力された場合、自動的に発着駅相互間の最短経路に補正されます。係員操作型端末においては、「補正禁止」機能を用いることによって、大都市近郊区間内においても実乗車経路で発売することができますが、顧客操作型端末では、それを行うことができません。
よって、今回は、連続1券片の入力された経路「荻窪(中央東)代々木(山手2)品川(東海道)東京)」が、最短経路である「荻窪(中央東)東京」に補正されたことにより、画像のような乗車券となったわけです。
このように、この連続乗車券はマルスの自動的な挙動により発売された、一見すると変な連続乗車券なのです。
ちなみに、券面経路通りの乗車をする場合、荻窪から品川まで片道の行程となるため、片道乗車券が発売されます。
今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。