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Introduction

お越しくださり誠にありがとうございます。

「―『券』を求めて―」と題したこのブログは、私の趣味である鉄道のきっぷを主につづっていくブログです。お楽しみいただければ幸いでございます。

 

石川県白山市 北陸鉄道石川線 鶴来駅 2023年8月

 

筆者について

東京都新宿区出身、現在は東京都杉並区に在住している生徒。

物心がついたころからの鉄道好き。知り合いで鉄道旅をするときに「途中下車できるか??」と議論をしたことをきっかけに、きっぷや営業制度への興味を持つ。今ではそれがメインの趣味に。好きな路線は大糸線

このほか、昔所属していたボーイスカウトの影響で現在も登山などのアウトドア趣味や、「響け!ユーフォニアム」「氷菓(<古典部>シリーズ)」「青春ブタ野郎」シリーズ、プロ野球チーム東京ヤクルトスワローズのファン。

 

その他

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神奈川県相模原市緑区藤野駅近く 沢井隧道内にて  2023年8月

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・鉄道系 かぶき揚げ(@KabukiAge_1107)

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当ブログは掲載内容で生じた損害に対する一切の責任を負いません。 当ブログでは可能な限り情報の正確性を心がけていますが、安全性や確実な情報提供を保証するものではありません。なお、掲載している乗車券類や運送約款等の内容はその発売日又は更新日現在のものです。 加えて、リンク先のサイトで提供される情報についても当方は責任を負いかねます。ご了承ください。

 

令和5年12月1日 筆者

この下車代はどこ下車代??

旅客鉄道会社には、いわゆる「下車代」と呼ばれる取扱があります。

たとえば、このきっぷ、舞浜駅の「東京駅下車代」などがありますが、これはどういう意味なのでしょうか。

この乗車券、経路に舞浜駅が属する京葉線は含まれていません。舞浜駅に行くには京葉線と分岐する東京駅からの運賃が別途必要です。

そこで、「東京駅までこの乗車券を使用した」「別途乗車をして舞浜まで乗った」ということを証明するための証明がこの「下車代」の証明です。定めとしては、旅客営業取扱基準規程第247条第3項第2号、第271条第1項第2号に規定があります。

また、「下車代」がなぜ「下車」なのかについては、第271条第1項第1号をご覧いただくと分かるかと存じます。

(併用乗車券の入鋏方)
第247条 連続した2区間以上の乗車券を併用して乗車する場合の入鋏方は、次の各号に定めるところによる。

(中略)

3 規則第20条第1項第2号又は同第247条の規定によつて発売した普通乗車券を使用して当該券片区間の駅に下車した場合で原乗車券を回収することができないときは、第271条第1項第1号及び同項第2号の規定によつて取り扱つたものであるときを除き、次の各号に定めるところにより取り扱うものとする。
 (1)第271条第1項第3号の規定によつて取り扱つたものであるときは、原乗車券に表示された「何駅分岐」の箇所に途中下車印を押す。
 (2)前号以外のときは、原乗車券の券面に「何駅代」の例により記入し、駅名小印を押す。

(中略)

(別途乗車の取扱方)
第271条 車内補充券又は改札補充券の事由欄を「分岐」とする別途乗車の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱うものとする。
 (1)分岐駅において取り扱う場合は、原乗車券に途中下車印を押す。
 (2)分岐線内の分岐駅以外の駅において取り扱う場合は、原乗車券の券面に分岐駅名及びその要旨を「何駅代」と記入し、途中下車印を押す。
 (3)前各号以外の場合は、原乗車券の券面に分岐駅名及びその要旨を「何駅分岐」と記入して証明する。

 

では、このきっぷを見てみましょう。

こんどは、この乗車券に押印されている立川駅の「新宿駅代」について考えます。なお、「何駅代」は「何駅下車代」と同じ意味で、定めでは「何駅代」の文言が使われています。

この乗車券をみると、品川駅は券面経路に含まれていますが、新宿駅は券面経路に含まれていません。日暮里駅下車代とすべきところですが、一体なぜ新宿駅下車代なのでしょうか。

新宿駅下車代となる根拠は、旅客営業規則第159条第1項にあります。

(特定区間を通過する場合のう回乗車)

第159条
旅客は、普通乗車券、普通回数乗車券又は団体乗車券によって、第70条に掲げる図の太線区間を通過する場合には、この区間をう回して乗車することができる。

第159条第1項には、「第70条に掲げる図の太線区間を通過する場合には、その区間をう回して乗車することができる」とあります。

これが、第70条の太線区間です。今回の乗車券の場合、日暮里・赤羽間はこの太線区間を通過しています。すなわち、今回の乗車券において日暮里・赤羽間は「太線区間から出ない」「重複乗車とならない」という点に注意すれば日暮里・赤羽間の最短経路ではないルートでも乗車することができます。

これを適用し、日暮里から御茶ノ水千駄ケ谷経由で新宿まで出て、新宿から分岐として別途乗車をしたということになります。

 

この場合はどうでしょうか。

券面左上、鶴見駅の「東京駅下車代」について考えます。

この乗車券、第70条の図太線区間を通過しているので、先ほどの立川駅の例と同じようにう回乗車を適用し、別途支払う運賃が低廉となる品川駅下車代とすればよいと思えます。

しかしながら、この例では東京駅下車代です。一体なぜなのでしょう。

おもな理由は、第159条の条文にあります。第159条の条文の末尾は「~することができる」です。「することができる」ならば、する必要はありません。旅客が「じゃあしませんと言えば、別にそれでも良いのです。このような理由から、今回の例では品川駅下車代ではなく東京駅下車代となっています。

 

最後にこの乗車券です。

京葉線南船橋駅からの片道乗車券です。出札補充券にて発売されました。

経路は「南船橋〈京葉〉東京〈東北新幹線〉上野〈東北〉…」です。

券面には立川駅の東京駅代が証明されています。東北新幹線は在来線の東北本線と同一線扱いのため、必ずしも新幹線に乗車する必要はありません。

今回の場合、第159条のう回乗車をせずとも、分岐駅は神田駅となり、「東京駅代」ではなく神田駅代となるのが正当に思えます。しかしながら実は、東京駅代でも正当なのです。根拠は先ほどにも一度掲げた旅客営業取扱基準規程第247条第3項です。

(併用乗車券の入鋏方)
第247条 連続した2区間以上の乗車券を併用して乗車する場合の入鋏方は、次の各号に定めるところによる。

(中略)

3 規則第20条第1項第2号又は同第247条の規定によつて発売した普通乗車券を使用して当該券片区間の駅に下車した場合で原乗車券を回収することができないときは、第271条第1項第1号及び同項第2号の規定によつて取り扱つたものであるときを除き、次の各号に定めるところにより取り扱うものとする。
 (1)第271条第1項第3号の規定によつて取り扱つたものであるときは、原乗車券に表示された「何駅分岐」の箇所に途中下車印を押す。
 (2)前号以外のときは、原乗車券の券面に「何駅代」の例により記入し、駅名小印を押す。

今までに掲げた3枚の乗車券は全て旅客営業取扱基準規程第271条第1項第3号による「何駅代」の券面証明でしたが、今回のものは、この旅客営業取扱基準規程第247条第3項第2号によるものです。

条文で指定されている「規則第20条第1項第2号」と「同第247条」はそれぞれ次の通りです。

(乗車券類の発売範囲)

第20条
駅において発売する乗車券類は、その駅から有効なものに限って発売する。ただし、次の各号に掲げる場合は、他駅から有効な乗車券類を発売することがある。
  1. (中略)
  2. (2)乗車券(通学定期乗車券を除く。)を所持する旅客に対して、その券面の未使用区間の駅(着駅以外の駅については、途中下車のできる駅に限る。)を発駅とする普通乗車券を発売する場合。
  3. (中略)

(別途乗車)

第247条
旅客が、乗車変更の請求をした場合において、その所持する乗車券が、乗車変更の取扱いについて制限のあるものであるとき又は旅客運賃計算の打切り等によって旅客の希望するとおりの変更の取扱いができないものであるときは、その取扱いをしない区間について、別途乗車として、その区間に対する相当の旅客運賃を収受して取り扱う。
2
旅客が、乗車券に表示された発着区間内の未使用区間の駅を発駅として、当該駅から分岐する他の区間を別途に乗車する場合又は当該駅から折り返して原乗車券類の発着区間内を乗車する場合は、前項の規定に準じて取り扱う。

つまり、あらかじめ駅で別途乗車区間に対する乗車券を購入する場合、その別途乗車を始めた区間の発駅を下車代の駅として取扱うことになるのです。今回の場合、あらかじめ東京駅が未使用区間に含まれる状態で東京駅から立川駅への別途乗車に対する乗車券を購入し、原乗車券である南船橋からの出札補充券に下車代の証明を頂きました。

別途購入した乗車券はこちらです。

 

今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。

旅客営業取扱基準規程第109条と旅客営業規則第159条についての東日本旅客鉄道の解釈

旅客営業規則第70条には、図の広大な特定区間を通過する場合にその特定区間内を最短経路で運賃計算をすると規定されています。

乗車券類はこの第70条などの特例を除いて、旅客が乗車する経路のとおりに発売すると規定されているため、第70条の特定区間を2度以上通過する経路の乗車券類も発売しなければなりません。そのような場合を想定して規定されているのが旅客営業取扱基準規程第109条です。

(特定区間を再び経由する場合の普通旅客運賃の計算方)
第109条 規則第69条及び同第70条に規定する区間の一方の経路を通過した後、再び同区間内の他の経路を乗車する場合の普通旅客運賃は、旅客の実際に乗車する経路の営業キロ又は運賃計算キロによつて計算することができる。

この規定では規則第70条特定区間を1度通過した後にもう一度同区間を通過する場合に、最短経路がすでに経由している運賃計算経路と重複する場合に旅客の実乗車経路で運賃計算をすることができるとしています。

実際にその規定を適用して発売された乗車券がこちらです。

1度目の通過では東京・日暮里間。2度目の通過では赤羽・品川間を通過しています。

2度目の赤羽・品川間の最短経路は東京経由ですが、その運賃計算経路では、1度目の通過の経路と重複してしまいます。そのため、今回の場合は規程第109条を適用し赤羽・品川間については実際に乗車する経路である新宿経由で運賃計算がされています。

 

旅客営業規則には、第70条の特定区間を通過する場合にその運賃計算経路にかかわらず、入口駅から出口駅まで経路重複をすることなく、特定区間内の別の経路で乗車できるという規定、第159条があります。

(特定区間を通過する場合のう回乗車)

第159条
旅客は、普通乗車券、普通回数乗車券又は団体乗車券によって、第70条に掲げる図の太線区間を通過する場合には、この区間をう回して乗車することができる。

この規定ではそのう回乗車に関して特に制限の規定はありません。

ここで、1つの疑問が生じました。このう回乗車で、すでに通過済みまたは今後の経路にある運賃計算経路や実乗車経路をう回乗車することはできるのでしょうか。東日本旅客鉄道に問い合わせを行い、確認することにしました。問い合わせの内容は以下のとおりです。

① 旅客営業規則第159条の規定は、同第70条の特定区間を通過する場合に、その入口駅から出口駅まで運賃計算経路にかかわらず、重複乗車することなくう回乗車できるという認識で間違いないか。

② 旅客営業規則第70条の特定区間を2度以上通過する場合、すでに通過している運賃計算経路ならびに実乗車経路と2度目以降の経路が重複するう回乗車はすることができるか。

 

問い合わせから数日後に回答を頂けました。回答の内容は以下のとおりです。

① 旅客営業規則第159条については、認識のとおり運賃計算経路にかかわらず、その通過経路内で重複乗車することなく入口駅から出口駅まで乗車することが可能。

② 旅客営業規則第70条の特定区間を2度以上通過する乗車券は、旅客の実乗車経路により発売をすることがあるが、1度通過した経路を再度通過することはできないので、そのようなう回乗車はすることはできない。

頂けた回答から、疑問に対して考えてみます。

前提として、第159条の解釈は先述した通りで間違いないようです。ここでは②の質問が問題になります。

どうやら、規則第159条のう回乗車は、規程第109条を適用する場合、制限されるようです。

そもそも、規程109条を適用する場合は規則第70条の特定区間を通過していますが、実乗車経路で運賃計算をすると規定しているため、2度目以降の通過では規則第159条のう回乗車をすることができないと考えるのは納得できるでしょう。

一方、初回の通過では話が変わります。規程109条は2度目以降の通過に対しては実乗車経路で運賃計算をすると規定しているもので、初回の通過ではう回乗車をすることができるはずなのです。しかしながら、今回の回答はノー。旅客営業規則や旅客営業取扱基準規程を照らし合わせても「できない」という根拠規定は見当たらず、釈然としないところですが、JR東日本の解釈としては問い合わせの回答通り、ということになっているようです。

 

今回の問い合わせに回答していただいた東日本旅客鉄道さまには深く感謝申し上げます。

旅客営業取扱基準規程第271条第1項第3号による券面証明

ご覧いただきありがとうございます。題名の基準規程に規定されている券面証明を取り上げます。こちらの乗車券をご覧ください。

〈東〉池袋発行

片道乗車券「醒ケ井→塚口」琵琶湖沿岸をぐるりと回る経路の乗車券です。

ネタ要素は様々あることと思いますが、今回の記事の話題は「京都分岐.4032Mレチ」という証明になります。

この証明は、敦賀駅より乗車した特急サンダーバード32号の車内で車掌より受けたものです。これが意味する内容は一体なんなのかといいますと、「京都駅から分岐事由になる別途乗車の乗車券を4032M車内で発行した」という内容です。

この乗車券にて、京都駅から奈良線に乗車し宇治駅まで行くとき、京都・宇治間を乗車できる効力が必要になります。この場合、原乗車券に対し、区間変更の取り扱いのほか、京都駅から分岐となる別の乗車券を発売することが可能です。

今回発売された乗車券はこちらになります。往復券にてお願いしました。

大阪車掌区乗務員発行 車内補充券

別途に発行した分岐となる乗車券を発行する際にその原券となる乗車券に別途乗車になる乗車券を発行した証明をすることが必要になります。その券面証明について規定されているのが、旅客営業取扱基準規程271条です。

(別途乗車の取扱方)
第271条 車内補充券又は改札補充券の事由欄を「分岐」とする別途乗車の取扱いをする場合は、次の各号に定めるところにより取り扱うものとする。
(1) 分岐駅において取り扱う場合は、原乗車券に途中下車印を押す。
(2) 分岐線内の分岐駅以外の駅において取り扱う場合は、原乗車券の券面に分岐駅名及びその要旨を「何駅代」と記入し、途中下車印を押す。
(3) 前各号以外の場合は、原乗車券の券面に分岐駅名及びその要旨を「何駅分岐」と記入して証明する。
(以下略)
今回の場合は、分岐駅や分岐線内の駅で取り扱っているわけではなく、1号2号に規定はされていません。よって第3号に規定されている「何駅分岐」という証明がされています。なお、併用乗車券の入鋏方について定めた基準規程第247条では、上記の場合に宇治駅で途中下車印を押印するとしていますが、今回は下車代印が押印されました。
(併用乗車券の入鋏方)
第247条 
連続した2区間以上の乗車券を併用して乗車する場合の入鋏方は、次の各号に定めるところによる。
(1)旅行開始駅では、最初の区間に対する乗車券にだけ入鋏し、その他の区間に対する乗車券は、そのまま旅客に所持させる。
(2)車内では、改札をした区間に対する乗車券にだけ入鋏する。
(3)前各号の乗車券を旅行終了駅で回収した場合は、旅行開始駅の入鋏または改札鋏痕のない乗車券に対して、便宜入鋏する。
2 2区間以上の乗車券を併用して乗車する旅客が、第2券片区間で途中下車をする場合は、当該下車駅で第1券片を回収のうえ、第2券片に入鋏し、裏面に「何駅代」の例により記入し、これに駅名小印を押さなければならない。第3券片以下の区間で途中下車をする場合も、この例によるものとする。
3 規則第20条第1項第2号又は同第247条の規定によつて発売した普通乗車券を使用して当該券片区間の駅に下車した場合で原乗車券を回収することができないときは、第271条第1項第1号及び同項第2号の規定によつて取り扱つたものであるときを除き、次の各号に定めるところにより取り扱うものとする。
(1)第271条第1項第3号の規定によつて取り扱つたものであるときは、原乗車券に表示された「何駅分岐」の箇所に途中下車印を押す。
(2)前号以外のときは、原乗車券の券面に「何駅代」の例により記入し、駅名小印を押す。
 
今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。

規則とマルスの乖離~旅客営業規則第70条と新幹線~

旅客営業規則には、第70条という特定区間を通過する場合の運賃・料金計算の営業キロまたは運賃計算キロに関する規定があります。

 

第70条
第67条の規定にかかわらず、旅客が次に掲げる図の太線区間を通過する場合の普通旅客運賃・料金は太線区間内の最も短い営業キロによって計算する。この場合、太線内は、経路の指定を行わない。
2
蘇我以遠(鎌取又は浜野方面)の各駅と前条第1項第5号に掲げるいずれかの経路を経由して前項に掲げる図の太線区間を大久保以遠(東中野方面)、三河島以遠(南千住方面)、川口以遠(西川口方面)又は北赤羽以遠(浮間舟渡方面)へ通過する場合の普通旅客運賃・料金は、第67条及び前条第1項第5号の規定にかかわらず、外房線蘇我・千葉間、総武本線千葉・錦糸町間及び前項に掲げる図の太線区間内の最も短い経路の営業キロによって計算する。

 

 

この規則が何を意味するのか説明します。

例えば、常磐線水戸駅から中央線三鷹駅までの乗車券を発売する場合を考えてみましょう。この場合、日暮里・新宿駅間を第70条に掲げる図の太線区間から出ないで乗車するとき、旅客が実際に乗車する経路に関わらず、山手線内回りのみを利用した最短経路が運賃計算経路となります。

 

日暮里・新宿間の乗車経路例

  • 東北[田端]山手2 営業キロ11.3km (最短のため。これが運賃計算経路となる)
  • 東北[神田]中央東 営業キロ13.5km
  • 東北[東京]東海道[品川]山手1[代々木]中央東 営業キロ23.2km

 

こちらの乗車券をマルスで発行した場合の経由欄印字は、「常磐・中央東」となり、日暮里・新宿間の「東北」と「山手」は印字が省略されます。

なぜ印字が省略されているのかというと、第70条には「経路をしていしない」とはっきりと規定されているからです。指定されない経路を印字しないというのは、考えれば、至極当然のことであるといえます。

 

省略される経由線一覧(通過の場合)

  • 山手1 品川・代々木間(渋谷経由)
  • 山手2 新宿・日暮里間(駒込経由)
  • 赤羽線 池袋・赤羽間
  • 東海道 東京・品川間(左記区間のみ東海道線に乗車の場合に限る)
  • 東北 東京・日暮里間(左記区間のみ東北線に乗車の場合に限る、)
  • 東北2 田端・赤羽間(王子経由、左記区間のみ東北線に乗車する場合に限る)

 ※詳細はこちらをごらんください

 

では、通過で新幹線を経由する場合はどうなるでしょうか。

最初に、品川・赤羽間を通過する場合を見てみます。

こちらの乗車券は、品川・赤羽間を次のような運賃計算経路で通過しています。

~武蔵小杉[横須賀線]品川[新幹線]東京[東北新幹線]上野[東北]日暮里[山手2]田端[東北2]赤羽[埼京]~

前提として、品川・赤羽間は最短経路は東京経由となっています。乗車券の経由欄をご覧ください。

「~横須賀線・品川・新幹線・東京・新幹線・上野・北赤羽~」となっています。

ここで、ひとつの疑問が生じます。それは、「経由欄に『品川・新幹線・東京・新幹線・上野』という表示をしてもよいのか」です。

そもそも、「経路の指定を行わない」としている中で、新幹線経由の運賃計算経路になっているのかというと、旅客営業規則第16条の2において、品川・東京間と東京・上野間の新幹線は、それぞれ東海道線東北線と同一線とするという規定があるからです。制度上、品川・上野間は新幹線経由だろうと在来線経由だろうと同じ東海道線東北線なので、最も短い営業キロにおいて運賃計算をする70条としては特に何ら関係ないことというふうになります。このことから、運賃計算経路を新幹線経由にしているのは、特段問題はないでしょう。規則第154条第1項第1号イ、第156条により、近郊区間外のため、2日間有効となります。

ここから本題に入ります。まずは、次の規則条文をご覧ください。

(特定区間を通過する場合のう回乗車)

第159条
旅客は、普通乗車券、普通回数乗車券又は団体乗車券によって、第70条に掲げる図の太線区間を通過する場合には、この区間をう回して乗車することができる。
(中略)

(特定区間発着の場合のう回乗車)

第160条
第70条第1項に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券又は普通回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、う回して乗車することができる。ただし、別に定める場合を除き、う回乗車区間内では、途中下車をすることはできない。

これらは、第70条に関連する例外規定の抜粋です。ひとつは先ほどから何度か文章上に出している第159条、もうひとつが、第70条太線区間内発着の乗車券の効力に関する規定です。条文を見比べてみましょう。

第159条では

「旅客は、普通乗車券、普通回数乗車券又は団体乗車券によって、第70条に掲げる図の太線区間を通過する場合には、この区間をう回して乗車することができる」

としているのに対し、第160条では

「第70条第1項に掲げる図の太線区間内にある駅発又は着の普通乗車券又は普通回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、う回して乗車することができる」

という条文になっています。

第70条太線区間通過の迂回乗車を規定している第159条には「乗車券の券面表示経路にかかわらず」という文言がないことがわかります。もし、第70条太線区間を通過する乗車券にも、太線区間内の経路を表示するのならば、「乗車券の券面表示経路にかかわらず」という文言を条文中に入れるべきです。このことから、規則的にも、「第70条太線区間通過区間の経路表示はしない」ということになっていると解釈することができます。この乗車券の券面をみると、「経路指定しない」としている太線区間内があたかも経路が指定されているようです。品川・東京間と東京・上野間の新幹線利用においては、第70条の規定に反しながらも、第156条の大都市近郊区間などの効力に関する面をわかりやすくするため、その規定を優先し印字していると考えるのが妥当でしょう。

 

では、東京から新横浜以西、大宮以北に行く場合はどうなるでしょうか。

最初に、東京から東海道新幹線に乗車し、新大阪方面へ行く乗車券についてです。

 

(雪えす氏提供)

こちらの乗車券は、国立から尼崎まで、東海道新幹線を経由している乗車券です。

乗車券の経由欄は「中央東・東京・新幹線・新大阪・東海道」となっています。この乗車券では、新宿・品川間が第70条太線区間を通過しているため、渋谷経由の最短経路での運賃計算をしなければなりません。しかし、乗車券の券面には、経由が東京と記載されています。この乗車券の運賃計算経路はどうなっているのでしょうか。

国立・尼崎間の新宿・品川間最短経路で運賃計算した場合の合計営業キロは592.1km、東京経由で運賃計算した場合の合計営業キロは598.6km。どちらも同じ運賃帯のため、どちらで運賃計算がされているのかわかりません。

新大阪を乗車券着駅として調べた結果、武蔵境・新大阪(大阪市内)の乗車券は、東京経由か渋谷経由かによって運賃帯が変わるとわかったので、JR東日本のインターネット予約サイト「えきねっと」を使用して、普通片道乗車券の運賃を調べてみます。

ちなみに、渋谷経由の合計営業キロは575.6km、東京経由の合計営業キロは582.1kmとなります。それぞれ普通大人無割運賃は9130円と9460円となり、券面経路通りの運賃計算を行っていた場合、330円の過収受が発生している、ということになります。では、結果をご覧ください。

 

まず、こちらが経由駅に渋谷を指定した、70条太線区間最短経路で計算した結果になります。先行調査のとおり、575.6kmの9130円となりました。では次に、経由駅を東京にしていしたときの結果を見てみましょう。

 

東京経由の検索結果です。渋谷を経由駅にしていしたときと全く同じ、575.6kmの9130円という結果が出ました。先述した通り、東京経由の場合、営業キロ数は582,1kmとなるので、この検索結果の数値とは異なります。この結果から考えると、マルスにおいて、東京から新横浜以西へ東海道新幹線に乗車する場合、太線区間は最短経路での運賃計算としているようです。しかし、その場合には経路表示から省略されるべき「東京」が、この乗車券では印字されてしまっているのです。これでは、1枚の乗車券の中で矛盾が発生している状態、いわば「規則とマルスの乖離」が起こってしまっているのです。

 

(雪えす氏提供)

軽井沢から国立までの片道券です。

券面を見ればわかる通り、第70条太線区間を通過しているのに加え、経路印字には「東京」が現れています。運賃計算が東京経由の場合、学割運賃は2720円となるため、これも先ほどと同様、矛盾が発生してしまっています。どうやら、マルスは第70条関連区間で新幹線に乗車するすべての場合において、入力された新幹線部分の経路をそのまま印字するようなシステムとして、旅客へのわかり易さを優先しているがゆえ、規則との乖離が起こっている部分があるようです。

 

ここまで、旅客営業規則第70条と新幹線に関連する、「マルスと規則の乖離」についてご紹介しました。駄文となってしまいましたが、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

無賃送還の取扱

今回は、列車の運行不能により、無賃送還の取扱を受けた話をご紹介します。

無賃送還をはじめとした列車の運行不能時や遅延時の取扱は規則上とても複雑でわかりにくいことから、規則の解説もはさみながら受けた取扱を解説します。

品川→(中)大久保 池袋駅南F4発行

こちらが、昨日使用した乗車券です。経路は券面経路欄をご参照ください。

成田線我孫子支線のPOS端末設置駅を訪れようと思い、乗車していましたが、我孫子支線車両故障により運転を見合わせていました。

旅行開始時点での運転再開見込は13:00ということで、成田に着く頃には運転再開しているだろうと旅行を継続。

しかしながら、総武本線四街道駅を過ぎたあたりで運転再開見込が16:00へと変更に駅で係員に代行バスなどを尋ねましたが、その時点では未定。仕方なく、旅行継続は断念し佐倉駅から列車運行不能による無賃送還の取扱を受けました。

この乗車券にされた券面証明は「5/6(日付)13:37(時刻)無賃送還取扱い願います。」の赤ボールペンの記入と駅名小印の捺印。

今回の我孫子支線車両故障は列車の運行不能に該当し、規則第282条第1項イからヘに規定されている取扱を受けることができます。

(列車の運行不能・遅延等の場合の取扱方)

第282条
旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、次の各号の1に該当する事由が発生した場合には、事故発生前に購入した乗車券類について、当該各号の1に定めるいずれかの取扱いを選択のうえ請求することができる。ただし、定期乗車券及び普通回数乗車券を使用する旅客は、第284条に規定する無賃送還(定期乗車券による無賃送還を除く。)、第285条に規定する他経路乗車又は第288条に規定する有効期間の延長若しくは旅客運賃の払いもどしの取扱いに限って請求することができる。
  1. (1)列車が運行不能となったとき
    1. イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    2. ロ 第283条に規定する有効期間の延長
    3. ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    4. ニ 第285条に規定する他経路乗車並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    5. ホ 第287条に規定する不通区間の別途旅行並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    6. ヘ 第288条に規定する定期乗車券若しくは普通回数乗車券の有効期間の延長又は旅客運賃の払いもどし
    7. (後略)

無賃送還は、無賃送還開始駅から乗車券発駅まで経路通りに行われます。この乗車券の場合、無賃送還の取扱は佐倉駅から、経路を後戻りする形で品川駅までです。ただし、東京・品川間は在来線も可能です。

(無賃送還の取扱方)

第284条
第282条第1項の規定により旅客が無賃送還の取扱いの請求をした場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
  1. (1)無賃送還は、その事実が発生した際使用していた乗車券の券片に表示された発駅(当該乗車券が発駅共通のものであるときは、発駅共通区間内の旅客の希望駅)までの区間(以下「無賃送還区間」という。)を最近の列車(急行列車を除く。)に乗車する場合に限り取り扱う。
  2. (中略)
  1. (3)無賃送還は、乗車券の券面に表示された経路によって取り扱うものとする。ただし、やむを得ない事由によって乗車券に表示された経路により無賃送還の取扱いができないときは、他の経路の列車により乗車させることがある。
  2. (4)無賃送還中は、途中下車の取扱いをしない。
  3. (5)旅客が、前各号による乗車を拒んだときは、無賃送還の取扱いをしない。
  1. (後略)
無賃送還は、乗車券発駅まで戻ることが可能なだけでなく不乗区間についての運賃の払い戻しを受けることができます。

(無賃送還の取扱方)

第284条 2
前項の規定により無賃送還を行った場合は、次の各号の定めるところにより旅客運賃及び料金の払いもどしをする。
  1. (1)乗車券
    1. イ 発駅まで無賃送還のとき
      すでに収受した旅客運賃の全額
    2. ロ 発駅に至る途中駅まで無賃送還をしたとき又は旅客が無賃送還中の途中駅に下車したとき
      1. (イ)原乗車券が無割引のものであるときは、途中駅・着駅間に対する無割引の普通旅客運賃
      2. (ロ)原乗車券が割引のものであるときは、割引条件のいかんにかかわらず、途中駅・着駅間に対する当該割引の普通旅客運賃
      3. (ハ)(イ)及び(ロ)の場合、着駅が第86条及び第87条の規定による特定都区市内及び東京山手線内に関連する乗車券であるときは、当該中心駅を着駅とし、また、2駅以上を共通の着駅とした乗車券であるときは、その最遠駅を着駅として計算した額
    3. ハ イ及びロの場合に、旅客が当該券片を使用して途中下車をしていたとき(ロの場合は、途中駅・着駅間内の駅に途中下車をしていたときに限る。)は、その途中下車駅(途中下車駅が2駅以上のときは、最終途中下車駅)を途中駅とみなしてロの規定によって計算した額

列車の運行不能による無賃送還、払戻しにおいて重要なのは途中下車の有無です。途中下車の有無によって払戻し額は異なります。

途中下車がない場合は上に示した規則第284条の2第1項イに該当し、乗車券の運賃全額が払い戻しとなります。

しかし、途中下車をしていた場合、ハに規定されているように払戻し額は最終途中下車駅から着駅までとなります。

ここで今回の券面を確認してみましょう。

途中下車の証明である途中下車印は2つあり、「東京駅」と「千葉駅」の途中下車印です。この場合、最終途中下車駅は千葉駅なので、千葉駅から中央線大久保駅までの運賃を乗車券経路通りに払戻しということになります。

また、この乗車券は学生割引運賃が適用されているので、千葉・大久保間の2割引き運賃が払戻し額となります。

規則第286条により本来払い戻しは送還を終えた駅にあたる品川駅で行わなければなりません。しかし、今回は私がその条文を知らず、改札係からも後日当社窓口で払い戻しを受けてくださいと案内があったため払戻しはまだ受けていません。

払戻し額について考えてみます。

運賃計算ソフト「MARS for Windows」にて算出しました。

不乗区間営業キロ合計は106.1km、学割運賃である1580円の払い戻しとなります。

 

今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。