<

旅客営業取扱基準規程第109条と旅客営業規則第159条についての東日本旅客鉄道の解釈

旅客営業規則第70条には、図の広大な特定区間を通過する場合にその特定区間内を最短経路で運賃計算をすると規定されています。

乗車券類はこの第70条などの特例を除いて、旅客が乗車する経路のとおりに発売すると規定されているため、第70条の特定区間を2度以上通過する経路の乗車券類も発売しなければなりません。そのような場合を想定して規定されているのが旅客営業取扱基準規程第109条です。

(特定区間を再び経由する場合の普通旅客運賃の計算方)
第109条 規則第69条及び同第70条に規定する区間の一方の経路を通過した後、再び同区間内の他の経路を乗車する場合の普通旅客運賃は、旅客の実際に乗車する経路の営業キロ又は運賃計算キロによつて計算することができる。

この規定では規則第70条特定区間を1度通過した後にもう一度同区間を通過する場合に、最短経路がすでに経由している運賃計算経路と重複する場合に旅客の実乗車経路で運賃計算をすることができるとしています。

実際にその規定を適用して発売された乗車券がこちらです。

1度目の通過では東京・日暮里間。2度目の通過では赤羽・品川間を通過しています。

2度目の赤羽・品川間の最短経路は東京経由ですが、その運賃計算経路では、1度目の通過の経路と重複してしまいます。そのため、今回の場合は規程第109条を適用し赤羽・品川間については実際に乗車する経路である新宿経由で運賃計算がされています。

 

旅客営業規則には、第70条の特定区間を通過する場合にその運賃計算経路にかかわらず、入口駅から出口駅まで経路重複をすることなく、特定区間内の別の経路で乗車できるという規定、第159条があります。

(特定区間を通過する場合のう回乗車)

第159条
旅客は、普通乗車券、普通回数乗車券又は団体乗車券によって、第70条に掲げる図の太線区間を通過する場合には、この区間をう回して乗車することができる。

この規定ではそのう回乗車に関して特に制限の規定はありません。

ここで、1つの疑問が生じました。このう回乗車で、すでに通過済みまたは今後の経路にある運賃計算経路や実乗車経路をう回乗車することはできるのでしょうか。東日本旅客鉄道に問い合わせを行い、確認することにしました。問い合わせの内容は以下のとおりです。

① 旅客営業規則第159条の規定は、同第70条の特定区間を通過する場合に、その入口駅から出口駅まで運賃計算経路にかかわらず、重複乗車することなくう回乗車できるという認識で間違いないか。

② 旅客営業規則第70条の特定区間を2度以上通過する場合、すでに通過している運賃計算経路ならびに実乗車経路と2度目以降の経路が重複するう回乗車はすることができるか。

 

問い合わせから数日後に回答を頂けました。回答の内容は以下のとおりです。

① 旅客営業規則第159条については、認識のとおり運賃計算経路にかかわらず、その通過経路内で重複乗車することなく入口駅から出口駅まで乗車することが可能。

② 旅客営業規則第70条の特定区間を2度以上通過する乗車券は、旅客の実乗車経路により発売をすることがあるが、1度通過した経路を再度通過することはできないので、そのようなう回乗車はすることはできない。

頂けた回答から、疑問に対して考えてみます。

前提として、第159条の解釈は先述した通りで間違いないようです。ここでは②の質問が問題になります。

どうやら、規則第159条のう回乗車は、規程第109条を適用する場合、制限されるようです。

そもそも、規程109条を適用する場合は規則第70条の特定区間を通過していますが、実乗車経路で運賃計算をすると規定しているため、2度目以降の通過では規則第159条のう回乗車をすることができないと考えるのは納得できるでしょう。

一方、初回の通過では話が変わります。規程109条は2度目以降の通過に対しては実乗車経路で運賃計算をすると規定しているもので、初回の通過ではう回乗車をすることができるはずなのです。しかしながら、今回の回答はノー。旅客営業規則や旅客営業取扱基準規程を照らし合わせても「できない」という根拠規定は見当たらず、釈然としないところですが、JR東日本の解釈としては問い合わせの回答通り、ということになっているようです。

 

今回の問い合わせに回答していただいた東日本旅客鉄道さまには深く感謝申し上げます。