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無賃送還の取扱

今回は、列車の運行不能により、無賃送還の取扱を受けた話をご紹介します。

無賃送還をはじめとした列車の運行不能時や遅延時の取扱は規則上とても複雑でわかりにくいことから、規則の解説もはさみながら受けた取扱を解説します。

品川→(中)大久保 池袋駅南F4発行

こちらが、昨日使用した乗車券です。経路は券面経路欄をご参照ください。

成田線我孫子支線のPOS端末設置駅を訪れようと思い、乗車していましたが、我孫子支線車両故障により運転を見合わせていました。

旅行開始時点での運転再開見込は13:00ということで、成田に着く頃には運転再開しているだろうと旅行を継続。

しかしながら、総武本線四街道駅を過ぎたあたりで運転再開見込が16:00へと変更に駅で係員に代行バスなどを尋ねましたが、その時点では未定。仕方なく、旅行継続は断念し佐倉駅から列車運行不能による無賃送還の取扱を受けました。

この乗車券にされた券面証明は「5/6(日付)13:37(時刻)無賃送還取扱い願います。」の赤ボールペンの記入と駅名小印の捺印。

今回の我孫子支線車両故障は列車の運行不能に該当し、規則第282条第1項イからヘに規定されている取扱を受けることができます。

(列車の運行不能・遅延等の場合の取扱方)

第282条
旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、次の各号の1に該当する事由が発生した場合には、事故発生前に購入した乗車券類について、当該各号の1に定めるいずれかの取扱いを選択のうえ請求することができる。ただし、定期乗車券及び普通回数乗車券を使用する旅客は、第284条に規定する無賃送還(定期乗車券による無賃送還を除く。)、第285条に規定する他経路乗車又は第288条に規定する有効期間の延長若しくは旅客運賃の払いもどしの取扱いに限って請求することができる。
  1. (1)列車が運行不能となったとき
    1. イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    2. ロ 第283条に規定する有効期間の延長
    3. ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    4. ニ 第285条に規定する他経路乗車並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    5. ホ 第287条に規定する不通区間の別途旅行並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
    6. ヘ 第288条に規定する定期乗車券若しくは普通回数乗車券の有効期間の延長又は旅客運賃の払いもどし
    7. (後略)

無賃送還は、無賃送還開始駅から乗車券発駅まで経路通りに行われます。この乗車券の場合、無賃送還の取扱は佐倉駅から、経路を後戻りする形で品川駅までです。ただし、東京・品川間は在来線も可能です。

(無賃送還の取扱方)

第284条
第282条第1項の規定により旅客が無賃送還の取扱いの請求をした場合は、次の各号に定めるところにより取り扱う。
  1. (1)無賃送還は、その事実が発生した際使用していた乗車券の券片に表示された発駅(当該乗車券が発駅共通のものであるときは、発駅共通区間内の旅客の希望駅)までの区間(以下「無賃送還区間」という。)を最近の列車(急行列車を除く。)に乗車する場合に限り取り扱う。
  2. (中略)
  1. (3)無賃送還は、乗車券の券面に表示された経路によって取り扱うものとする。ただし、やむを得ない事由によって乗車券に表示された経路により無賃送還の取扱いができないときは、他の経路の列車により乗車させることがある。
  2. (4)無賃送還中は、途中下車の取扱いをしない。
  3. (5)旅客が、前各号による乗車を拒んだときは、無賃送還の取扱いをしない。
  1. (後略)
無賃送還は、乗車券発駅まで戻ることが可能なだけでなく不乗区間についての運賃の払い戻しを受けることができます。

(無賃送還の取扱方)

第284条 2
前項の規定により無賃送還を行った場合は、次の各号の定めるところにより旅客運賃及び料金の払いもどしをする。
  1. (1)乗車券
    1. イ 発駅まで無賃送還のとき
      すでに収受した旅客運賃の全額
    2. ロ 発駅に至る途中駅まで無賃送還をしたとき又は旅客が無賃送還中の途中駅に下車したとき
      1. (イ)原乗車券が無割引のものであるときは、途中駅・着駅間に対する無割引の普通旅客運賃
      2. (ロ)原乗車券が割引のものであるときは、割引条件のいかんにかかわらず、途中駅・着駅間に対する当該割引の普通旅客運賃
      3. (ハ)(イ)及び(ロ)の場合、着駅が第86条及び第87条の規定による特定都区市内及び東京山手線内に関連する乗車券であるときは、当該中心駅を着駅とし、また、2駅以上を共通の着駅とした乗車券であるときは、その最遠駅を着駅として計算した額
    3. ハ イ及びロの場合に、旅客が当該券片を使用して途中下車をしていたとき(ロの場合は、途中駅・着駅間内の駅に途中下車をしていたときに限る。)は、その途中下車駅(途中下車駅が2駅以上のときは、最終途中下車駅)を途中駅とみなしてロの規定によって計算した額

列車の運行不能による無賃送還、払戻しにおいて重要なのは途中下車の有無です。途中下車の有無によって払戻し額は異なります。

途中下車がない場合は上に示した規則第284条の2第1項イに該当し、乗車券の運賃全額が払い戻しとなります。

しかし、途中下車をしていた場合、ハに規定されているように払戻し額は最終途中下車駅から着駅までとなります。

ここで今回の券面を確認してみましょう。

途中下車の証明である途中下車印は2つあり、「東京駅」と「千葉駅」の途中下車印です。この場合、最終途中下車駅は千葉駅なので、千葉駅から中央線大久保駅までの運賃を乗車券経路通りに払戻しということになります。

また、この乗車券は学生割引運賃が適用されているので、千葉・大久保間の2割引き運賃が払戻し額となります。

規則第286条により本来払い戻しは送還を終えた駅にあたる品川駅で行わなければなりません。しかし、今回は私がその条文を知らず、改札係からも後日当社窓口で払い戻しを受けてくださいと案内があったため払戻しはまだ受けていません。

払戻し額について考えてみます。

運賃計算ソフト「MARS for Windows」にて算出しました。

不乗区間営業キロ合計は106.1km、学割運賃である1580円の払い戻しとなります。

 

今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました。