今回も、旅客営業規則第70条についてのお話です。今回は、旅客営業規則第70条についての解説をしようと思います。どうぞ最後までお付き合いください。
まずは、旅客営業規則第70条の条文を見てみましょう。
①横浜市内→越後須原の片道乗車券
この乗車券の運賃計算経路は、次のようになり、運賃計算キロは280.2kmとなります。
この乗車券は第70条に適していると言えるでしょうか。
答えは、不適です。
品川・赤羽間は東京経由が最短経路となるため、東京経由で運賃計算キロを計算しなければなりません。
新宿を経由しているこの乗車券を実際に発売した場合、誤発売となります。
正しい乗車券は次のようになります。
正しい乗車券の運賃計算経路は、次のようになり、運賃計算キロは279.3kmとなります。
この例の場合、第70条を無視して乗車券を発売した場合、営業キロ280kmの運賃境を超えるため、旅客が240円の損をする、ということになります。このような場合もあるため、第70条には気を配る必要があるのです。
②日暮里→北高崎の片道乗車券
この乗車券の運賃計算経路は次のようになり、運賃計算キロは133.9kmです。
この乗車券は第70条に適している乗車券でしょうか。
この乗車券は、そもそも第70条に関係ないため、正当な乗車券となります。
第70条は、図太線区間を通過する場合に限って適用されるものです。つまり、通過ではなく区間内を出ずに遠回りしているだけのこの乗車券は、全くもって正当な乗車券であるのです。
③舞浜→上菅谷の片道乗車券
この乗車券の運賃計算経路は次のようになり、運賃計算キロは144.9kmです。
この乗車券は第70条に適している乗車券でしょうか。
答えとしては正当です。以下で解説していきます。
まず、第70条の条文では、「経路の指定をしない」と明確に規定されています。つまり、最短経路の路線で運賃計算をしなければならないのです。この場合、通過している東京・日暮里間の最短経路は、東京(東北)日暮里という経路になります。
ここで重要となる規定が、規則第16条の2です。
(東海道本線(新幹線)、山陽本線(新幹線)、東北本線(新幹線)、高崎線(新幹線)、上越線(新幹線)、信越本線(新幹線)、鹿児島本線(新幹線)及び長崎本線(新幹線)に対する取扱い)
この規定において、東北本線は東北新幹線と同一路線としての取扱をすると明確に規定されています。つまり、この場合において東京・上野間で東北新幹線を利用するとしても、問題はありません。このように、品川・東京間や東京・上野間を在来線との同一線において新幹線を使用する経路指定をすることができるのです。
今回の例の場合、新幹線を経由しないと大都市近郊区間で完結する乗車券となるので、新幹線を経由することによって途中下車が可能となる乗車券とすることもできます。
④佐倉→成田の片道乗車券
この乗車券の運賃計算経路は次のようになり、運賃計算キロは163.6kmです。
この乗車券は第70条に適している乗車券でしょうか。
答えは不適です。この例の乗車券は、実際には発売できません。
第70条を考えるうえで注意が必要になるのは、「太線区間は東京山手線内ではない」ということです。今回の乗車券の場合、錦糸町・赤羽間で第70条区間を通過しています。
錦糸町・赤羽間の最短経路は、錦糸町(総武線御茶ノ水支線)秋葉原(東北)赤羽となるので、東京をまわって新幹線を経由する乗車券を発売することはできないのです。
この場合、正当な乗車券は大都市近郊区間から出ない乗車券となるため、途中下車は不可能となります。
第70条は乗車券の効力に直結するため、注意が必要です。
乗車券は、その経路通りでないと使用できません。しかし、第70条によって発売された乗車券では、強制的に最短経路の乗車券となります。そうなると、旅客がもともと乗りたかった遠回りとなってしまう経路の乗車はできなくなってしまいます。そのような状態を防ぐため、旅客営業規則では第159条において、第70条の最短経路以外でも、区間内を出なければ最短経路以外の乗車もできるとしています。
(特定区間を通過する場合のう回乗車)
このように、旅客営業規則第70条は難しい規定に思えて、その内容自体は単純なものになっています。この記事が、第70条を理解する一助となれば幸いです。ここまでご覧いただき、ありがとうございました。